東芝産業機器システム株式会社


変圧器や産業用モーターの製造を行っている東芝産業機器システム株式会社様は、長年にわたり工場内の自動化に取り組んできました。その中でも、自動化が待ち望まれていたのは、変圧器のモールドコイル成型時に発生するバリを取り除く工程です。手作業で行われていたこの工程では、粉塵が発生するため、作業者が防塵服や防塵マスクを着用しなければならず、健康リスクや効率の低下が課題となっていました。
このような状況を改善するため、東芝産業機器システム株式会社様は、バリ取り作業の自動化を目指してリンクウィズの「L-ROBOT」を導入しました。今回は、L-ROBOT導入の経緯から成果までを、生産・製造技術担当の石川様と西尾様にお話を伺いました。
リンクウィズ:バリ取り作業を自動化しようと思われた背景を教えてください。
石川氏:L-ROBOTを導入しようと思った理由は、変圧器のモールドコイルの成型時に発生するバリ取り作業が手作業で行われており、非常に大変な重労働で作業者の健康に大きな負担をかけていたためです。特に粉塵が発生するため、防塵服を着用しなければならず、夏場には熱中症のリスクも高まっていました。弊社のトップがこの状況を改善することを急務と捉え、さまざまな自動化を検討していました。
リンクウィズ:働く環境の改善のために自動化を考えたのですね。L-ROBOTを知った経緯を教えてください。
西尾氏:センサー系のロボットを調べていた際、リンクウィズさんを見つけました。L-ROBOTはもともと溶接向けとありましたが、他の用途にも使えるのではないかと期待して連絡しました。
リンクウィズ:様々な自動化を検討された中で、L-ROBOTに着目した理由は何ですか?
西尾氏:L-ROBOTに着目したのは、ばらつきのあるワークに対応できる高度なセンサー技術が備わっていたからです。以前、別のロボット導入を試みましたが、ワークの大きさや形状のばらつきに対応できず、自動化がうまくいきませんでした。深く削れているワークもあれば、全く削れていないワークもありました。L-ROBOTはセンサーで細かな位置調整を行い、ばらつきを許容できる範囲内に収めることができた点が、導入の決め手となりました。
現場の環境改善のためにバリ取りの自動化が会社の重要課題だった東芝産業機器システム株式会社様。稼働前に動作プログラムを作りますが多くの苦労が待っていました。
リンクウィズ:導入を決定してから稼働までの過程で最も苦労した点は?
西尾氏:L-ROBOTの導入で最も苦労したのは、ワークのばらつきに対応するためのプログラム作成とその調整作業です。私たちが製造している変圧器のコイルは40〜50種類あり、それぞれに合わせたプログラムを作成する必要がありました。ワークのサイズや形状に差があるため、ロボットが適切に動作するよう細かくプログラムを調整し、検証も含め多くの時間と労力がかかりました。しかし、問題を一つずつ解決していった結果、満足できるレベルに達し、本格稼働を迎えました。
リンクウィズ:稼働までの間にリンクウィズのサポートで良かった点はありますか?
西尾氏:L-ROBOTの導入から稼働までの過程で、サポートで特に良かった点はリモート対応です。導入当初プログラム作成や調整の際に多くの課題が発生しましたが、リンクウィズさんのサポートチームがリモートで問題を確認し、適切なアドバイスをしてくれました。特にプログラム作成時、40種類以上のワークに対応するためにどのようにプログラムを最適化すれば良いか、効率の良い方法をリモートで教えてもらえたことが非常に助かりました。
やるべきプログラム作成や検証を終え実働へ。稼働して初めて分かったことがあると言います。
リンクウィズ:導入後に感じた効果や成果はありますか?
石川氏:手作業で行っていたバリ取り工程が自動化されたことで、防塵服を着用する必要がなくなり作業者の負担が大幅に軽減されました。特に夏場の作業では熱中症のリスクが減り、作業者が快適に作業できる環境が整いました。また、ワークをセットして加工が始まると作業員の手が空くのでヘルプなど他の作業にすぐ移れるようになりました。
リンクウィズ:サイクルタイムについてはいかがですか?
西尾氏:やはり、人の方が「慣れ」がある分サイクルタイムは短くなります。しかし、ロボットも動作プログラムの改善でサイクルタイムをさらに短くできるのではないかなと思っています。
リンクウィズ:サイクルタイムが長くなってしまいましたが、他の工程に影響は?
石川氏:サイクルタイムはもちろん重要ですが、今回の自動化の目的は「作業環境の改善」でした。実際に稼働が始まると、ロボットは昼休憩や小休憩など人が休んでる間も作業できるので、1日全体で見ると生産数に大きな差はありません。
リンクウィズ:連続稼働できるのはロボット導入の大きなメリットですね。他にロボットのいいところはありますか?
西尾氏:加工面が一定になるのはいいですね。人が加工するとどうしても削りが深い部分や浅い部分ができてしまい、品質にばらつきが出ます。しかし、ロボットなら同じ形状のワークであれば、同じように削ることができるため、品質が安定しました。
さらなる自動化や品質改善をするためにデータの活用も視野に。
リンクウィズ:今後、L-ROBOTで取り組みたいことはありますか?
石川氏:スキャンした点群データは全製品を測定している状態に近いです。ただ、現時点ではスキャンデータは捨てられており有効活用できていません。今後は測定データをもとに寸法の変化など製品の質チェックに活用できればと考えています。
リンクウィズ:データの活用は生産現場のDXに直結することだと思います。リンクウィズに期待することはありますか?
石川氏:ソフトだけではなく、ロボットの稼働状況もリモートで確認できるようになると良いですね。現場に行かないとロボットの状況がわからないので、私やリンクウィズさんがリモートでロボットコントローラーに入れて状況を把握できる仕組みがあると助かります。
あとは加工箇所が多いため、どうしてもスキャンから加工まで時間がかかってしまいます。サイクルタイム短縮にもつながるので、さらなるデータ処理の高速化をぜひ頑張ってもらいたいですね。