産業用ロボットの作業員に必要な資格は?特別教育の内容とは?
近年、さまざま業界で導入が進んでいる産業用ロボット。
人手不足の解消や生産効率の向上など、導入することでざまざまな恩恵を受けられることから、多くの現場で導入が進んでいます。しかし、導入によってメリットを得ると同時に作業中に発生する事故も増加傾向にあります。
そんな産業用ロボットの導入によって発生する事故ですが、最悪の場合は命に係わることもり、実際に作業員が亡くなる事故も発生しています。このような事故を未然に防ぐために、現在は産業用ロボットに関わる作業員に対し資格の取得が義務付けられています。
そこで、今回は資格を取得するための方法などについてご紹介していきます。
作業に関わるロボットによって資格の要否が異なる
一言で産業用ロボットといってもさまざまな種類がありますが、携わって行くにはどのような資格が必要になるのでしょうか?ここでは、作業員に求められる資格と取得方法、資格不要となるロボットについてまとめてみました。
「特別教育」を受けることで資格を取得
産業用ロボットは生産性や作業効率の向上に効果的な設備ではありますが、扱い方を間違えてしまうと取り返しのつかない事故に繋がる恐れがあります。そのため、リスク軽減や安全性の確保のために法律によって資格の取得が義務付けられています。
産業用ロボットの操作に必須とされる資格は「産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育」と言い、労働安全衛生法が定める「特別教育」を受けることで取得することが可能となっています。ちなみに、ロボットへの直接的な作業だけではなく、間接的におこなう作業員に対しても必須となります。
また、作業員に資格を取得させるのは事業者の義務となっており、もしも無資格で作業をおこなっていた場合は作業員と事業者の両方が罰せられることになります。特別教育の受講(資格取得)は安全確保だけでなく労働災害の防止といった目的もあるので、事業者は必ず作業員に資格を取得させましょう。
資格のいらない産業用ロボットは?
先ほど、産業用ロボットを操作するには資格が必要だと言いましたが、使用するロボットの出力が80W未満であれば、特別教育を受講することなく操作することができます(2021年2月現在)。代表的な機器として上げられるのが、昨今注目を浴びている「協働ロボット」で、作業員とロボットが協働して作業をおこなうことを目的として作られています。そのため、資格を求められる機器と比べて出力が低く、作業中に誤ってぶつかったとしても大きな事故に繋がる心配がありません。
また、このような機器は接触による事故防止のため緩衝材が使われていますし、強い衝撃が加わった場合には自動的に停止する機能が搭載されています。そのため、出力が規定未満のロボットを使った作業では無資格でも担当することができます。
特別教育の内容は「教示」「検査」の2種類
産業用ロボットに関わる作業員に求められる資格ですが、大きく分けて「教示」「検査」の2種類に分類されています。これらは担当する作業によって必要な資格が異なるため、作業員が担当する業務に応じた特別教育を受講する必要があります。
そこで、ここでは資格を取得する前に知っておくべき2種類の教育内容についてまとめましたのでご覧ください。
ロボットに対して位置や速度、動作を記憶させる「教示」
「教示」の資格が求められる作業内容は、ロボットへ動作を記憶させる作業をおこなう際に必須となります。産業用ロボットに任意の動作を記憶させ、適切な処理をおこなえるようにします。また、安定した作業を継続させるための動作スピードの設定などもおこないます。 作業内容からもお分かりいただけると思いますが、ロボットの近くでおこなう作業になるため非常に危険です。しかし、特別教育で安全に作業をおこなうための知識や、技術などを習得することで事故や怪我のリスクを最小限に抑えることができます。
修理・調整の作業担当なら「検査」
「検査」の資格が求められる作業内容は、産業用ロボットの修理・調整といったメンテナンスをおこなう業務です。基本的には検査をおこなう際に機器を停止した状態でおこなうことが多いですが、場合によって停止せずに稼働範囲外で作業をおこなうこともあります。 そのため、稼働中の機器を安全に検査するためにも特別教育を受け資格を取得することが義務付けられています。安全に対する知識や技術はもちろん、ロボットの内部構造や部品に関する講習も含まれています。
特別教育はどこで受講できる?
これまでの内容から産業用ロボットに関わる業務を担当する作業員は、義務付けられた教育を受講し資格を取得することが義務付けられていることがお分かりいただけたと思います。それでは、資格を取るための特別教育は一体どこで受講することができるのでしょうか?
受講場所は全国各地
資格を取得するための特別教育は、全国各地の労働基準協会連合や、中央労働災害防止協会で受講することができます。また、特別教育を実施しているロボットメーカーもあるので、使用するロボットが決まっている場合はそのロボットメーカーの特別教育を受けるのもいいかもしれません。
講座は定期的に開催されており、受講場所によって内容が異なることはありません。しかし、教示・検査ともに受講科目や所要時間が法律で定められているので、これらの条件を満たしておく必要があります。
また、受講者が規定数に満たない場合は講座が開催されないこともあるので、受講を検討している場合は複数の受講場所をピックアップし、講座の開催日時や募集人数などの確認をおこなっておきましょう。
より安全に、よりリスクを低減させるための資格
ここまでは産業用ロボットに関わるために必要な「特別教育」についてご説明しました。しかし、近年産業用ロボットや工場の自動化は加速し、複雑になっています。そのような状況でもロボット特有のリスクアセスメントの把握やリスクの低減をおこなうための資格「ロボット・セーフティアセッサ」というものがあります。 安全に対する意識を高めるためにも、全課程を修了した作業員におすすめされている資格となっています。
導入を検討するなら教育コストへの考慮も必要
産業用ロボットを導入する場合、事業者は作業員に必須となる資格を取得させることが義務付けられています。そのため、設備の導入コストはもちろん、教育に対するコストも考慮することが必要になります。
また、特別教育を受けたらと言って、すぐに実務レベルの作業ができるわけではありません。産業用ロボットの導入から稼働にかけて設備選定から人員の教育まで、しっかりしたスケジューリングが必要になってきます。
設備導入への投資に対して望んでいた価値が得られなければ経営負担になりかねません。最悪の場合は経営そのものが難しくなってしまう可能性もあります。そのため事業者はこのようなコストやリスクを考えた上での導入をおすすめいたします。