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溶接現場での協働ロボット。溶接ロボットが中小企業を救う理由

コラム
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重工業には欠かせない加工技術である「溶接」。複雑形状の溶接や少量多品種の溶接は作業員の手によって溶接が行われることが多いですが、技術の発展により産業用ロボットを使った溶接が増え、近年では協働ロボットを使って溶接を行う現場も増えてきました。

協働ロボットは作業員と同じ空間で動作し、人間と協働しながら作業を行うことが可能で、ひとつの作業を任せていた産業用ロボットとは違い、人をサポートし、より広範囲での活用が期待されています。近年ではこの協働ロボットを導入しようと考える企業が増加しています。

その中でも、特に中小企業にとって協働ロボットによる溶接は一筋の希望となっています。しかし、その理由は一体何なのでしょうか?このコラムでは協働ロボットによる溶接工程の構築がなぜ中小企業を救う存在となるのかについて解説します。

協働ロボットを使った溶接工程は製造業が抱える問題解決を期待できる

溶接は種類にもよりますが労働安全衛生法で定められた国家資格を取得しなければ作業を行うことができません。また、国家資格以外にも溶接方法や使用する材料によって民間資格や管理者向けの資格が必要な場合もあります。

こうした資格を取得すれば資格手当の支給や管理職を目指すといったキャリアアップも可能になります。しかし、製造業には「きつい」「臭い」「汚い」という3Kのイメージが今なお強く、少子高齢化の影響から若い就業者が減少しているため、溶接技術を継承する人材不足が加速しているのが現状です。

そんな人手不足を解決に導いてくれるのが溶接ロボットです。溶接ロボットは組み込まれたプログラム通りに動いてくれるので、作業員が介在する必要がない溶接の自動化が可能になります。また、作業員による溶接はどんなに熟練工であっても品質にバラつきが出てしまいますが、溶接ロボットなら安定した品質で溶接が可能になるので、安定した生産を見込めるようになります。

他にも、溶接作業は強い刺激となる光や体に害のある煙の発生、火傷をしてしまうなど、作業員の健康を害するリスクを伴います。ですが、溶接ロボットに作業を任せればこうしたリスクを回避することもできるので、作業環境の改善効果も期待できます。

導入ハードルが低い協働ロボット

製造業で使用されているロボットは大きく分けて「産業用ロボット」と「協働ロボット」の2種類があります。
産業用ロボットは作業員に変わって作業おこなうため、人件費削減や人手不足の解消、生産ラインの稼働時間を延ばせるといったメリットがあります。
しかし、規定出力が80Wを超える産業用ロボットを使用する場合、安全策を設置して人とロボットを完全に分離させなければならないことが法律で定められています。
さらに、産業用ロボットは中型・大型のものが多く、場合によっては設備内のレイアウトを変える必要が出てきますし、ロボット自体の価格も高価なので中小企業には導入のハードルが高くなってしまいます。

一方、協働ロボットはそもそもが人と協働で作業ができる仕様になっているので、わざわざ柵や囲いを設ける必要がなく、省スペースでの利用が可能です。さらに、協働ロボットは産業用ロボットに比べて価格が低いため導入ハードルが低く、コスト面で悩んでいる中小企業でも導入しやすいと言えます。

専門的な知識は不要!作業員でも簡単にティーチングできる

ロボットを動作させるには、どのような動きをさせるのかをロボットに教え込む「ティーチング」という作業をおこわなければなりません。
産業用ロボットはティーチングペンダントと言われるコントローラーでロボットを少しずつ動作させながらロボットに動作を教えます。そのため、産業用ロボットへのティーチングには大きな手間がかかってしまう他、複雑なティーチングが必要な場合にはティーチングマンを外注する必要がありました。
しかし、協働ロボットは作業員でも簡単にティーチングができる「ダイレクトティーチング」が可能になります。ダイレクトティーチングはペンダントを使わず、ロボットを直接動かすことで動作を教えることができるので、簡単かつ直感的にティーチングを行うことができます。

産業用ロボットを導入して大規模に自動化を進める大手企業に比べて、多品種少量生産の多い中小企業はロボットへの扱いに慣れていないケースが多いと言われています。ダイレクトティーチングができる協働ロボットなら初心者でも簡単にティーチングできるので、溶接作業を行う多くの中小企業から注目を集めています。

溶接用の協働ロボットを導入する際の注意点

多くの中小企業が注目している溶接ができる協働ロボットは低価格で導入ハードルが低くティーチングが簡単であるなど、多数の導入メリットがあることがお分かりいただけたと思います。
しかし、実際に導入するにあたっていくつかの注意点があり、ただ導入するだけでは想像していた結果とは異なる状態になってしまう可能性があります。

安全性は高いが危険性はゼロではない

協働ロボットはその名のとおり、人と協働での作業を目的として作られたロボットです。そのため、産業用ロボットと比べて同じ空間で作業を行う場合の安全性は高いと言えるでしょう。実際に協働ロボットにはさまざまな安全機能が備わっているので、産業用ロボットのように接触防止の柵や囲いを設ける必要はありません。

しかし、いくら協働ロボットとはいえ、溶接をおこなうので作業中の作業員への危険性はゼロではありません。ですので、リスクアセスメントを行った上で安全面に問題がある場合には、柵や囲いといった安全装置の設置など周辺設備を整える必要があります。

安全性が高い協働ロボットは生産ペースが遅め

協働ロボットは作業員と協働での作業を目的として作られているので、人と接触したとしても怪我をしにくい速度でしか動作しない仕様になっています。そのため、産業用ロボットに比べて協働ロボットでの溶接は生産ペースが遅くなってしまいます。

特に溶接ロボットの場合、条件によっては生産スピードを上げることができないため、早い生産ペースを期待している場合にはかなり遅く感じてしまうかもしれません。しかし、協働ロボットによっては人が近くにいるときは動作スピードが低下し、人が離れるとスピードが上昇するものもあるようです。

生産ペースを重視しているのであれば、人との距離で動作スピードが変わるロボットの導入、または協働ロボットではなく産業用ロボットの導入を検討してみてください。

完全自動化を狙うのは困難

協働ロボットは人と協働で作業を行う、または作業員の補助を行うロボットです。そのため、生産ラインの完全自動化を協働ロボットに求めることはできません。また、完全な自動化にしたい場合には、協働ロボットに加えてさまざまな装置の導入が必要になり、かえって導入コストが高くなってしまうこともあります。

ですので、場合によっては協働ロボットではなく産業用ロボットの導入が必要になるので、導入目的を明確にしておくことが大切です。

溶接用の協働ロボットは中小企業の助けになる!

溶接現場で活躍する協働ロボットは、製造業全体が抱えている人手不足や人にかかる負担の改善、低価格で導入ハードルが低い、ティーチングが簡単といったさまざまな理由で中小企業を救うと言われています。

特に製造業には3Kのイメージが強く、溶接作業は健康への影響もあることから人材確保が難しい業種となっています。さらに、ロボット導入となると専門的な知識や技術が求められるイメージもあります。

溶接用の協働ロボットの導入は、問題解決のきっかけとなり、低価格で導入のハードルも低いため中小企業の救世主となるでしょう。しかし、思いつきで導入を決めてしまうと想像とはちがう状態になってしまうので、ご紹介した注意点を参考にして、溶接現場で活用できる協働ロボットの導入をぜひ検討してみてください。

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